エッセイ

不完全さを楽しむ

Shunsuke

コーラを作れば、飲む人が笑顔になります。
ゲームを作れば、プレイする人が笑顔になります。

でもWebサービスって、作っても誰も笑顔にならないような気がしてしまうんですよね。

私はWeb系のエンジニアなのですが、実際、「便利になった」と思ってくれる人がいても、その何倍もの声で「ここが使いにくい」「意味が分からない」といった不満が返ってくる印象です。

Webサービスに限らず、「モノづくり」というのはそういうものになっているのかもしれません。

自分の理想的な状態で使えるのが大前提で、そこから「どれだけ不満があるか」というのが基本的な視点です。
いわゆる減点方式の世界ですね。

私たちが受けてきた教育が減点方式なので、基本的な価値観となってしまっているのかもしれません。

コーラなら「まずい」と感じる人は買わないだけ。
ゲームなら「つまらない」と感じる人はやらないだけ。

でも、Webサービスは「使いにくい」と言いつつも使い続ける人が多いですよね。
社内システムのように、「使わざるを得ない」という状況もあるかもしれません。

そして、その不満は遠慮なく投げかけられる。
その結果、使う側は不快、作る側も不快という負の連鎖。

この循環の中で「より良いものを作ろう!」なんて思う人は、減っていく一方じゃないかと思います。

正直、「使いにくい」と感じること自体は良いことだと思っています。
でも、それをまるで、価値がないかのように言うのは良くはないですよね。

その言葉の先に、私たちと同じように「感情を持った人」がいることを忘れてはいけないです。

たとえば、「ここをこうしてくれたら、もっと使いやすくなるので助かります」みたいな言い方だったら、作る側も「よし、やってみよう」と前向きな気持ちになれると思うんですよね。
でも、実際に返ってくるのは、「こんなの誰が作ったの?」「使えない」「センスがない」みたいな言葉が多いと思います。

作り手と使い手が対立する関係ではなく、同じ方向を向いて「もっと良くしよう」とできたら良いのに、と思います。

2024年8月に『Castlevania Dominus Collection』という『悪魔城ドラキュラ』シリーズのコレクションタイトルが発売されたのですが、とあるアップデートが話題になっていました。

それは「一部のバグ技が正しく再現するように修正」という内容のアップデートです。

[https://www.konami.com/games/castlevania/dominus_collection/jp/ja/topics/update_v1_01](https://www.konami.com/games/castlevania/dominus_collection/jp/ja/topics/update_v1_01)

「バグを発生させるための修正」なんて、なかなか見かけないですよね。
むしろ、バグはすべて修正したうえで、リメイクやリマスターを行うのが普通だと思います。

でも、「完璧なものを作れば、プレイする人がより笑顔になるのか」と言われたら、そうではないと思うんですよね。

昔のことを思い返すと、ゲームのバグは、多くの人がそれ自体もゲームの良さとして楽しんでいたと思うんですよね。
タマムシデパートで釣れるミュウ(ポケモン)だったり、強敵も簡単に倒せるバニシュデス(FF6)だったり。

作る側としては意図しない結果だったと思いますが、それが多くの人の思い出となっているのは事実です。

本質は、ゲーム文化への愛だったり、遊び心へのリスペクトだと思うんですよね。

もし私が開発者だったら、このようなアップデートを喜んでくれるような人にプレイしてもらいたいです。
完璧なものじゃなくても、その不完全さごと楽しんでもらえるような、そんな関係を築きたいです。

ただ、この「バグを発生させるための修正」もまた、不満点の修正ではあるんですよね。
プレイヤーである私たちは、本来、「バグが修正された作品」を楽しむべきだったと思います。

今はゲームもインターネットに接続できる時代で、頻繁にアップデートを行えるようになりました。
そのため、開発者はバグはすぐに修正できるようになり、プレイヤーは完璧を求めるようになりつつあると思います。

そういった意味では、ゲームは「娯楽」というよりも、「時間を潰すためのサービス」といった側面が強くなる気がしています。

「不完全さを愛する文化」が廊れていくんじゃないかと思うと残念ですね。

「Webサービスだって、もっと自由に選べるようになったらいいのに」と思いますね。

使いたい人が使って、使いにくいと感じたらそっと離れる。

そういう関係が築けるなら、きっと今よりもずっと健やかで、健全な世界になるんじゃないかなと思います。

少なくとも私は、「減点されないものを作る」のではなく、誰かの目線の先にあるちょっとした笑顔や、「助かりました」の一言に向けて作っていたいです。

結果として、そのほうが良いものが作れると思っています。

ABOUT ME
Shunsuke
Shunsuke
エンジニア / 心理カウンセラー / 起業家
ひとりの未熟な人間として、現時点での思考を静かに書き残しています。
正しさよりも、気づきや安心を大切にしたい。
誰かの心が少しでもやわらぐ言葉を残せたらと思っています。

noteにも書いています。
https://note.com/shunsuke0112
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