楽観と慎重さのあいだ
「ポジティブに考えよう」
そんな言葉を聞くたびに、少しだけ引っかかることがあります。
ポジティブであること自体は、悪いことではないと思います。
前向きな気持ちが、行動を後押ししてくれることもあるし、暗い気持ちのまま過ごすよりもずっと健やかだとは思います。
でも、「すべてがうまくいく前提で行動する」というのは、ポジティブとは少し違う気がするんですよね。
たとえば、こんな場面を想像してみてください。
- 新しい仕事を始めるとき、「きっとうまくいく」と思って準備をしない。
- 体調に不安があるのに、「大丈夫だろう」と放置する。
- 大事な約束の日に、「遅れることはないだろう」と余裕を持たずに出発する。
「すべてがうまくいく前提」だと、これらもポジティブに考えていることになってしまいます。
でも実際は、「うまくいかなかったときのこと」を考えていないだけですよね。
- 「この人とは絶対にうまくいく」と思い込んですぐに結婚をする。
- 「この銘柄は絶対に儲かる」と思い込んで全財産をつぎ込む。
このように人生に大きな影響を与えてしまうような場面だと、冷静な判断ができなくなってしまうこともあります。
楽観的な人は、うまくいくことを信じつつも、うまくいかなかったときの備えをしている人だと思います。
一方で、すべてがうまくいく前提で動く人は、その備えを省いてしまっています。
そして、うまくいかなかったときに、自分も周りも困ることになります。
この二つの違いは、「想像力」にあるのかもしれません。
「うまくいかないかもしれない」と想像できるかどうか。
その想像をしたうえで、それでも前に進めるかどうか。
それが、本当の意味での楽観なのではないかと思います。
「きっとうまくいく」と信じることは素敵なことです。
でも、「うまくいかなかったとしても大丈夫」と思える状態をつくっておくことは、もっと大切なことかもしれません。
備えがあるからこそ、安心して前を向ける。
余裕があるからこそ、挑戦できる。
「最悪のケースでも、なんとかなる」
そう思える土台があるとき、人は本当の意味で楽観的になれるのだと思います。
逆に、その土台がないまま「大丈夫、大丈夫」と言い聞かせるのは、楽観ではなく、ただ目をつぶっているだけかもしれません。
楽観的でありたい。
でも、慎重さを忘れたくはない。
その「あいだ」に、ちょうどいいバランスがあるのかもしれません。