上も下もない
誰かが、誰かに、しきりに頭を下げている。
一方は少し高圧的で、もう一方は、ひたすら謝っている。
たとえば、お客様と担当者。
こういう構図は、容易に想像できますよね。
頭を下げているほうが、なんとなく「下」に見えます。
強く出ているほうが、なんとなく「上」に見えます。
でも、ここで少し考えてみたいことがあります。
もし、その謝っている担当者が、ある日「すみません、辞めさせていただきます」と言ったとしたら。
本当に困るのは、どちらでしょう。
たぶん、ほとんどの場合、困るのは依頼したほうです。
代わりの人を探して、また一から事情を説明して、同じところまで戻すのに時間をかけて、頭を下げさせていた人のほうが立ち行かなくなる。
そういうことって結構ありますよね。
なんだか、不思議な話です。
立場が上に見える人と、いなくなると困る人とが、逆を向いている。
強く出られるのは、おそらく「この人は辞めない」と、どこかで思えているからなのでしょう。
その前提が崩れた瞬間に、上下はあっさり入れ替わってしまいます。
目の前の態度の大きさだけを見ていると、どちらがどちらを必要としているのかが、見えなくなります。
少しだけ引いて眺めると、関係が悪化した場合に立ち行かなくなるのは、むしろ強く出ているほうだった、ということがあります。
もちろん、必ずしもそうだとは限りません。
依頼したほうが、いざとなれば自分で全部引き受けて、何とかできるのなら、話は別です。
でも、強く出ている人ほど、その相手にどれだけ助けられているかが、見えていないことが多い気がします。
「自分のほうが上だ」という感覚のほうが、はっきりしているからなのかもしれません。
頭を下げているからといって、弱いとは限らない。
指示を出しているからといって、強いとも限らない。
立場の上下は、その場の役割で、たまたまそう見えているだけです。
仕事の都合や、お金の流れる向きが、そう決めているだけのことです。
立場に上や下はあっても、人としては、上も下もないです。
ただ、どちらも、お互いを必要としている。
本当はそれだけのことです。
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