思考

無理をして合わせるたびに、自分の輪郭が薄くなる

Shunsuke

「相手が返してほしいだろう言葉を返しています」

このような発言を耳にしたことがあります。
もっともらしい言葉に聞こえますが、これは本当に相手のためになっているのでしょうか。

当たり前のことですが、他人の思考を完全に理解することは不可能ですよね。
そのうえで、自分の考えを手放し、誰のものでもない言葉を返すことには、果たしてどれほどの価値があるのでしょうか。
それだと、自分の言動が「他人の機嫌を取るためだけのもの」に変わっている気がします。

そのような行動を続けていると、いつの間にか「自分自身」が「自分以外の何者か」になってしまいます。
そして、気づかないうちにそれが「自分自身」だと信じ込んでしまいます。

  • 好かれたい
  • 認められたい
  • 褒められたい

そんなことばかり考えていると、いつの間にか自分を見失ってしまうんですよね。

古代ギリシャの哲学者エピクテトスは、こんな言葉を残しています。

何としてでも気に入られたいと願う瞬間、人は奴隷になる。いつの間にか自分の行動原理を他者に握られてしまう。

2000年以上前の言葉ですが、今の私たちにもそのまま当てはまるように思います。

「嫌われたくない」という気持ちに支配されてしまうと、自分の言動が「相手の機嫌を取るためだけのもの」に変わってしまう。
そのとき、「自分」はどこへ行ったのでしょうか。

人の心について、深く考えている人ほど「相手のことはわからない」ということを受け入れています。
相手が望んでいる言葉を推測して、それに合わせて自分の感情を偽る必要はないです。
あなたが超能力者でもない限り、その言葉が裏目に出る可能性も十分あります。

そう考えると、コントロールできない他者の感情よりも、自分自身の感情に目を向けることのほうが健全だと思います。

心理学者の河合隼雄さんは、こんな言葉を残しています。

大切なのは、どんな道を選ぶにしても、「私はこうしました」と言えるやり方で選んだかどうかだと思います。それをみんな、ついつい「正しい」のはどれだ、と探そうとするから結局「私」がなくなってしまう。

「正しい」のはどれだ、と探すうちに、「私」がなくなってしまう。

人に合わせることの問題は、「正しい」を探しすぎて、自分の判断軸を手放してしまうことなのかもしれません。

なぜ、人に合わせすぎてしまうのか

人に合わせてしまう背景には、さまざまな心理が隠れています。

  • 嫌われたくない
  • 揉めたくない
  • 「いい人」でいたい

これ自体は自然な感情です。
でも、この気持ちが強くなりすぎると、自分の本音よりも「相手がどう思うか」を優先するようになってしまいます。

もう一つ、共通する傾向があります。
それは、「相手の感情に対して責任を感じてしまう」ことです。

自分の発言で相手が不機嫌になったら、「自分のせいだ」と感じてしまう。
だから、相手を傷つけないように、本音を隠してしまう。

そして、合わせ続けていると、少しずつ自分を見失っていきます。

グレッグ・マキューン氏は著書『エッセンシャル思考』の中で、ホスピスの看護師ブロニー・ウェアが記録した、死を迎える患者たちの後悔を紹介しています。
もっとも多かった後悔は、「他人の期待に合わせるのではなく、自分に正直に生きる勇気がほしかった」というものでした。

「自分に正直に生きること」は、人生の最後になってはじめて気づくほど、難しいことなのかもしれません。

自分の気持ちを取り戻すために

人に合わせすぎる自分を変えるのは、簡単ではありません。
でも、少しずつ自分の気持ちに正直になっていくことはできます。

まず、シンプルな原則を心に留めてみてください。

言いたいことは言えばいい。
言いたくないことは言わなくていい。

相手が不機嫌になったり、悲しんだりしても、その感情の責任をあなたが引き受ける必要はありません。
引き受けてしまうと、あなたが我慢し続けることになります。

精神科医の藤野智哉さんはこう述べています。

そもそもあなたがどれだけ考えて話しても、誤解のないように行動しても、結局、相手は見たいようにしか見ないので、好きに動いたらいい。

どれだけ気を遣っても、相手の受け取り方はコントロールできません。
それなら、自分の気持ちに正直でいるほうが、結果的に自然な関係が築けるのではないでしょうか。

一つだけ注意したいことがあります。
自分の気持ちに正直になることと、感情的に攻撃することは別物です。
感情が不安定なときは、発言を控えることが望ましいです。

我慢せずに伝えた結果、相手が悲しむのと、攻撃的な発言をした結果、相手が悲しむのでは、意味が違いますからね。

冷静なときに、自分の気持ちを丁寧に伝える。
それが、相手を大切にしながら自分も大切にするコミュニケーションではないでしょうか。

相手の心を読もうとすることよりも、どんなことでも伝えられる関係を築こうとすることのほうが重要だと思います。
「こう言ったら嫌われるかもしれない」と怖がりながら言葉を選ぶより、「何でも言い合える関係を作ろう」と意識すること。
長い目で見ると、そのほうが健全な関係が育ちます。

  • 自分は今、何を言いたいのか
  • 自分は何をやりたいのか
  • 今の言動は、本当に自分の気持ちから出ているか

このように問いかけること自体が、自分の気持ちを取り戻す第一歩になります。
答えがすぐに見つからなくても大丈夫です。

あなたは最近、「私はこうしたい」と言えていましたか?

ABOUT ME
Shunsuke
Shunsuke
エンジニア / 心理カウンセラー / 起業家
ひとりの未熟な人間として、現時点での思考を静かに書き残しています。
正しさよりも、気づきや安心を大切にしたい。
誰かの心が少しでもやわらぐ言葉を残せたらと思っています。

尊敬する人物はチャーリー・マンガーとウォーレン・バフェット。
記事URLをコピーしました