「たった30秒の絵」が高額な理由

次のピカソにまつわる有名なエピソードをご存知ですか?
ある日、ピカソがレストランで食事をしていたときのこと。
隣に座っていた女性が「絵を描いてほしい」と頼んできました。
ピカソはすぐに肖像画を描き、女性に渡した後に数千フランを請求しました。
驚いた女性が「たった30秒で描いた絵ですよ」と言うと、ピカソはこう答えたといいます。
「いいえ、この絵を描くのには30秒ではなく、30年と30秒かかりました」
このエピソードは、作品の価値が「どれだけの時間で作られたか」ではなく、
その背景にある経験や積み重ねによって決まるのだと教えてくれます。
私たちはつい、「目に見える作業時間」にばかり注目してしまいがちです。
しかし、本当に価値ある仕事は、その裏にある長い年月の努力や工夫、そして情熱によって支えられています。
たとえば、何かのサービスや技術を提供してくれる人に「安くしてほしい」と頼むことは、
その人がこれまで注いできた情熱や努力を、無意識に軽く見てしまう行為にもなりかねません。
もちろん、価格に対して慎重になるのは自然なことです。
ですが、それが「相手の価値を疑うこと」になってしまわないように注意しておきたいですね。
誇りをもって仕事に向き合っている人たちには、それに見合う報酬が支払われるべきだと思います。
彼らの仕事には、これまで積み重ねてきた時間や経験が自然とにじみ出ています。
そして、そのような人たちが届けてくれるサービスや作品には、どこか温かさや深みがあります。
きっとそれは、単なるスキルや効率だけではたどり着けないものだと思います。
一方で、ただ効率だけを追い求めた仕事では、心に残る温かさや深みまではなかなか生まれません。
どちらが良い・悪いという話ではありませんが、
私はやっぱり、「楽しみながら、自分を磨きながら、人の役に立つことを喜びとする人」を応援したくなります。
そういう人たちの仕事には、時間や価格だけでは測れない価値が宿っている気がします。
私たち一人ひとりが、そのような価値を見抜き、正当に評価できるようになれたら、
きっともっと良い関係や社会が生まれていくと思います。
ピカソの言葉を胸に、人の時間と努力にも敬意を払っていきたいですね。