楽観と慎重さのあいだ

「ポジティブに考えよう」

そんな言葉を聞くたびに、少しだけ引っかかることがあります。

ポジティブであること自体は、悪いことではないと思います。
前向きな気持ちが、行動を後押ししてくれることもありますし、暗い気持ちのまま過ごすよりもずっと健やかだとは思います。

でも、「すべてがうまくいく前提で行動する」のは、ポジティブとは少し違う気がするんですよね。

たとえば、こんな場面を想像してみてください。

新しい仕事を始めるとき、「きっとうまくいく」と思って準備をしない。
体調に不安があるのに、「大丈夫だろう」と放置する。
大事な約束の日に、「遅れることはないだろう」と余裕を持たずに出発する。

どれも、前向きな気持ちからの行動に見えます。
でも実際は、「うまくいかなかったときのこと」を考えていないだけかもしれません。

楽観的な人は、うまくいくことを信じつつも、うまくいかなかったときの備えをしている人だと思います。

一方で、すべてがうまくいく前提で動く人は、その備えを省いてしまっている。
結果として、うまくいかなかったときに、自分も周りも困ることになります。

この二つの違いは、「想像力」にあるのかもしれません。

「うまくいかないかもしれない」と想像できるかどうか。
その想像を持ったうえで、それでも前に進めるかどうか。

それが、本当の意味での楽観なのではないかと思います。

「きっとうまくいく」と信じることは素敵なことです。
でも、「うまくいかなかったとしても大丈夫」と思える状態をつくっておくことは、もっと大切なことかもしれません。

備えがあるからこそ、安心して前を向ける。
余裕があるからこそ、挑戦できる。

「最悪のケースでも、なんとかなる」

そう思える土台があるとき、人は本当の意味で楽観的になれるのだと思います。

逆に、その土台がないまま「大丈夫、大丈夫」と言い聞かせるのは、楽観ではなく、ただ目をつぶっているだけかもしれません。

楽観的でありたい。
でも、慎重さを忘れたくはない。

その「あいだ」に、ちょうどいいバランスがあるのかもしれません。


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