人間関係

褒めて伸ばす方法|叱るより効果的な信頼関係を築くコミュニケーション術

Shunsuke

突然ですが、教師の立場になって考えてみてください。

あなたのクラスに、平均的な成績の生徒がいます。
ある日のテストで、彼は驚くべき高得点を獲得しました。
あなたはその成績を称賛し、クラス全体の前で彼を褒めました。

しかし、次回のテストでは彼の点数は以前の状態に戻ってしまいました。

そしてその次のテストでは、今度は非常に低い点数を取ってしまいました。
この成績に対して、あなたは彼を叱り、もっと努力するよう促しました。

その結果、次のテストでは点数は再び以前の状態に戻りました。

今後、あなたは彼に対してどのように接しますか?

このような経験から、「褒めたのに成績が下がった」「叱ったら改善された」と感じ、叱る教育が効果的だと結論づけてしまうことがあります。

でも実は、これには統計的なトリックが隠れているんですよね。

この記事では、なぜ叱る教育が効果的に見えるのか、そして本当に人を伸ばす「褒めて伸ばす」方法についてお伝えします。

なぜ「叱る教育」が効果的に見えるのか?

冒頭でご紹介した例を、もう一度振り返ってみましょう。

褒めた後に成績が下がり、叱った後に成績が上がった。

この結果だけを見ると、叱る方が効果的に見えますよね。

でも、これは「平均への回帰」という統計的な現象による錯覚です。

「平均への回帰」とは?

人の成績やパフォーマンスは、常に一定ではありません。
良い日もあれば、悪い日もあります。

そして、極端に良い結果や悪い結果は、一時的なものであることが多いんですよね。
時間が経てば、自然と平均的な状態に戻っていきます。

褒めるきっかけとなった「とても良い成績」の後は、自然と平均に戻る。
叱るきっかけとなった「とても悪い成績」の後も、自然と平均に戻る。

つまり、褒めても叱っても、結果は同じである可能性が高いです。

叱ったから改善されたわけではない

私たちは、褒めた後に成績が下がると「褒めたせいで調子に乗った」と考えがちです。
逆に、叱った後に成績が上がると「叱ったおかげで頑張った」と思い込んでしまいます。

でも、どちらも単に「平均に戻っただけ」という可能性が高いです。

ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンは、著書『ファスト&スロー』の中で、イスラエル空軍の飛行教官たちがこの錯覚に陥っていた例を紹介しています。

教官たちは「褒めると次の飛行で失敗する」「叱ると次は成功する」と感じていました。
しかし実際には、これは平均への回帰であり、褒めることも叱ることも、次のパフォーマンスには影響していませんでした。

褒めて伸ばすことが効果的な理由とは?

では、褒めることと叱ることの効果が同じなら、どちらを選ぶべきでしょうか。

私は、褒めるアプローチをおすすめします。

動物の調教師が実践するアプローチ

動物と強い信頼関係を築く飼育員や調教師は、常に褒めるアプローチを採用しています。

うまくできたときはご褒美を与える。
悪いことをしたときは叱るのではなく、ご褒美を減らす。

これが、信頼関係を築くための基本なのだそうです。

叱ることは、相手に恐怖を与えます。
恐怖によって行動を制御することは可能ですが、それは信頼関係とは言えませんよね。

一方、褒めることは、相手に安心感と喜びを与えます。
「この人といると良いことがある」という感覚が、信頼の土台となります。

「私のことを思って叱ってくれている」という誤解

「厳しく叱ってくれる人こそ、本当に私のことを思ってくれている」

そう感じる方もいるかもしれません。

でも、本当に相手を思いやるのであれば、「叱る」という攻撃的な感情を含む行為は必要ないと思います。

相手の成長を願うなら、叱ること以外にも伝える方法はあるはずです。
大切なのは、相手の尊厳を守りながら、必要なことを伝えることではないでしょうか。

相手を傷つけずに指摘する方法とは?

「褒めるだけでは、相手の問題点を伝えられない」

そう思われる方もいると思います。

確かに、時には改善点を伝えることも必要です。
でも、それは「叱る」という形でなくても可能なんですよね。

「人」ではなく「行動」を批判する

批判が必要な場合は、相手そのものではなく、相手の方針や行動に焦点を当てることが大切です。

たとえば

「あなたはだらしない」ではなく、「この書類の提出が遅れると困る」と伝える。

「あなた」という人格を否定するのではなく、「この行動」について話す。

この違いが、相手の尊厳を守ることにつながります。

逆に、相手を褒める際には、その人の個々の良さを認めて称賛するようにしましょう。
「この資料、見やすくて助かった」ではなく、「○○さんは、いつも分かりやすい資料を作ってくれるね」のように伝えると良いです。

行動を批判し、人を褒める。

このバランスが、相手の成長を促しながら信頼関係を築く鍵になると思います。

Iメッセージを活用する

「あなたは○○すべきだ」という言い方は、相手を追い詰めてしまいます。

代わりに、「私は○○と感じている」「私は○○してもらえると助かる」という形で伝えてみてください。

これは「Iメッセージ」と呼ばれる手法で、自分を主語にして気持ちを伝えることで、相手を責めずに要望を伝えることができます。

Iメッセージについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
Iメッセージの使い方|相手を尊重しながら自分の気持ちを伝えるコツ

褒めるときのコツとは?

褒めることが大切だとは言っても、どう褒めればいいか分からない方も多いのではないでしょうか。

ここでは、効果的な褒め方のコツをご紹介します。

具体的に褒める

「すごいね」「よくやったね」という抽象的な褒め方だと、相手は何が良かったのか分かりません。

「○○の部分が特に良かった」「△△の工夫が素晴らしかった」と、具体的に伝えることが大切です。

具体的に褒められることで、相手は「自分のことをちゃんと見てくれている」と感じることができます。

過程を褒める

結果だけでなく、そこに至るまでの努力や工夫を認めることも重要です。

「結果が出てよかったね」だけでなく、「結果が出なくても、あなたが粘り強く取り組んでいたのを知っているよ」と。

過程を認められると、「たとえ失敗しても見てもらえている」という安心感が生まれます。
その安心感が、次の挑戦への勇気につながるのだと思います。

タイミングを逃さない

褒めるべき行動を見つけたら、その場で褒めることが効果的です。

時間が経ってから「そういえばあのとき」と言われても、相手にはピンとこないかもしれません。

良い行動を見つけたら、すぐに伝える。

そのタイミングが、褒める効果を最大化してくれます。

なんでも褒めない

一方で、なんでも褒めれば良いというわけではありません。

根拠のない褒め言葉は、かえって信頼を損なうことがあります。
「この人は何も分かっていない」「おだてているだけだ」と思われてしまうかもしれません。

本当に良いと思ったことを、心から褒める。

その誠実さが、相手に伝わるのだと思います。

信頼関係を築くために大切なこととは?

ここまで、褒めることの効果と方法についてお伝えしてきました。

最後に、信頼関係を築くためにもう一つ大切なことをお伝えしたいと思います。

自分の非を認める勇気

相手に何かを伝えるとき、自分に少しでも非がある場合は、まずその点について謝罪することが重要です。

自ら謝罪することには勇気が必要ですが、信頼関係を築くためには欠かせない行動だと思います。

「自分は落ち度がない」と感じていても、冷静に考えてみれば、意外と見つかるものです。

相手の話をもっと聞くべきだった。
もう少し早く伝えるべきだった。
自分の伝え方に問題があったかもしれない。

自分の落ち度を探す作業は辛いかもしれません。
でも、その過程こそが自己成長につながると思います。

自分の悪いところが見つかるのは、実はうれしいことなんですよね。
そこを改善することで、また少し成長できますからね。

まとめ:褒めて伸ばすコミュニケーションで信頼関係を育む

「叱ったら改善された」
「褒めたら調子に乗った」

そう感じた経験があるかもしれません。

でもそれは、「平均への回帰」という統計的な現象による錯覚かもしれません。
褒めても叱っても、極端な状態は自然と平均に戻ります。

だとすれば、相手に安心感と喜びを与える「褒める」アプローチを選んでみてはいかがでしょうか。

動物の調教師が実践するように、良い行動にはご褒美を、悪い行動にはご褒美を減らす。
批判が必要なときは、「人」ではなく「行動」に焦点を当てる。

そして、自分に非があれば素直に認める。

そんな姿勢が、相手との信頼関係を育んでいくのだと思います。

大切な人の成長を願うなら、まずは褒めることから始めてみませんか。

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参考文献

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Shunsuke
Shunsuke
エンジニア / 心理カウンセラー / 起業家
ひとりの未熟な人間として、現時点での思考を静かに書き残しています。
正しさよりも、気づきや安心を大切にしたい。
誰かの心が少しでもやわらぐ言葉を残せたらと思っています。

尊敬する人物はチャーリー・マンガーとウォーレン・バフェット。
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