嫌いな人と働かなければならないとき|不機嫌な人に振り回されない心の持ち方
- 朝から不機嫌そうな上司
- ランチに誘うのをためらわせるお局
- 何を言っても感じの悪い同僚
職場で「嫌いな人」と関わらなくていいなら、こんなにラクなことはありませんよね。
でも現実は、毎日のように顔を合わせなければなりません。
離れたくても離れられない関係の中で、自分の心をどう守るか。
それは、多くの働く人にとって切実なテーマなのではないでしょうか。
家に帰っても、相手の言葉や態度が頭から離れない。
お風呂に入りながら反芻して、ベッドに入っても切り替えられない。
そんな夜を繰り返しているなら、この記事が少しの助けになるかもしれません。
結論を先にお伝えすると、相手は変えられません。
でも、自分の関わり方は変えられます。
なぜ嫌いな人のことが頭から離れないのか?
会社を出たのに、頭の中はまだ会議室にいる。
電車に乗っても、お風呂に入っても、相手の発言を何度も思い出してしまう。
そんなとき、私たちの時間は「相手」に占拠されています。
本来は自分のために使えたはずの数時間が、嫌いな人に明け渡されている状態です。
ローマ皇帝でありストア哲学者でもあったマルクス・アウレリウスは、こう書き残しています。
君に残された時間は、公益にかかわるものでなければ、他人のことで思いわずらうことに浪費してはならない。なにか有用なことをすることから、君を遠ざけてしまうからだ。誰それが何をやっているとか、なぜ、そしてなにを言っているとか、なにを考えているとか、なにをやろうとしているかとか、そんなことに思いわずらっていると、自分の精神に集中することができなくなってしまう。
この視点で見直すと、相手のために削られた時間の重さに、少しだけ気づけるかもしれません。
ちなみに、嫌な発言そのものへの対処については、こちらの記事でもお伝えしています。
→ 嫌なこと言われた時の対処法|言葉を「受け取らない」という選択肢
相手を変えようとしていませんか?
「なぜ謝らないの」
「なんで、こんな態度を取るの」
「普通、気を遣うものじゃないの」
そう感じたとき、私たちは静かに「相手に変わってほしい」と望んでいます。
そしてその期待が叶わないと、怒りや諦めが生まれます。
気づかないうちに、相手の機嫌で自分の感情がアップダウンするようになってしまいます。
エピクテトスというストア派の哲学者は、こう述べています。
我々は、家庭や職場での人間関係において、他人に「こうなってほしい」と求めることが頻繁にある。しかし、勘違いしてはいけないのは、他人は自分にどうにかできるものではない。他人のやることは自分にはどうしようもできないのだ。あなたが望んでよいこと、それは「自分ができること」である。態度の悪い上司を変えることはできないが、自分がその上司に接する態度を変えることはできる。
ストア派には「我々次第であるもの」と「我々次第でないもの」を見分ける、という考え方があります。
- 我々次第であるもの:自分の判断、自分の態度、自分の選択
- 我々次第でないもの:他人の機嫌、他人の発言、他人の評価
相手の不機嫌は、私たちの裁量の外にあります。
「期待を手放す」と聞くと、冷たい諦めのように感じるかもしれません。
でも、本当はそうではないと思います。
期待を手放すというのは、自分のエネルギーを「自分でどうにかできる範囲」に戻す行為ではないでしょうか。
似たテーマは、こちらの記事でもお伝えしています。
→ 思い通りにならないときの対処法|変えられることと変えられないことを区別して心を軽くする
不機嫌な人に振り回されないための3つの心の持ち方とは?
期待を手放すと言っても、明日からすぐに気持ちを切り替えられるわけではありません。
ここからは、不機嫌な人と関わるときに使える、もう少し具体的な3つの心の持ち方をお伝えします。
不機嫌を「天気」だと思う
雨の日に、空に向かって怒る人はいません。
「なんで雨が降っているんだ」と恨んでも、雨はやみませんよね。
だから私たちは黙って傘を差します。
不機嫌な人の態度も、雨に似ています。
- その日の朝、相手の家で何があったか
- 前日に上司から何を言われたか
- 慢性的にどんな疲れを抱えているか
本人にしかわからない事情の積み重ねが、態度として表れています。
私たちには、そのすべてを変える力はありません。
だったら、不機嫌は「今日の天気」だと割り切ってしまうのも、一つの方法です。
雨だから傘を差すように、相手が不機嫌だから少しだけ距離を置く。
あるいは、必要な業務だけを淡々とこなす。
その判断を、感情ではなく天気予報を見るような感覚でできると、消耗の量は確実に減っていく気がします。
自分を「観察者」にする
職場で何かを言われた瞬間、心がざわつく。
そのとき、もう一人の自分を呼び出すイメージを持ってみるといいかもしれません。
「あ、今この人、いつもの不機嫌が出てきたな」
「私の心も、これで波立っているな」
舞台の上で起きている出来事を、客席から眺めるような視点です。
マルクス・アウレリウスは、こんな言葉を残しています。
自分の心のなかほど静かで、面倒ごとから解放された場所はない。自分の心のなかを見つめたとき、たちまち心が完全に落ち着くようなよりどころをもっていればなおさらだ。心の落ち着きとは、心の秩序にほかならない。いつも心のなかに隠れ家をもち、自分を取り戻すのだ。
エピクテトスも、こう続けています。
自分に関する出来事をできるだけ他人事のように捉えてみることだ。自分に起きた出来事を他人事のように考えると、感情の振れ幅は小さくなる。
- 会議でマウントを取られたとき
- Slackで塩対応の返信をされたとき
- ランチに自分だけ誘われなかったとき
そんな瞬間に、観察者としての自分を呼び出せると、ダメージは半分くらいに軽くなることがあります。
「離れられない」前提で心理的距離を取る
物理的に席を離れる、部署異動を願い出る。
それができるなら、もちろんその選択肢もありだと思います。
でも、すぐには動けないことのほうが多いですよね。
そんなときは、心理的距離を取ることから始めてみるのがおすすめです。
具体的には、こんな選び方ができます。
- 業務に必要な会話だけに絞る
- 相手の不機嫌な空気に巻き込まれそうなときは、書類仕事に集中する
- ランチや雑談の場には、無理に参加しない
- 退勤後はSlackの通知を切る
これは「冷たい人」になることではありません。
不機嫌な感情は、近くにいる人に少しずつ伝染します。
だからこそ、感染源から一定の距離を取るのは、自分を守るための予防行動だと思います。
「人の輪に入らないと嫌われるかも」と感じる人ほど、距離を取るのが難しいかもしれません。
その不安については、こちらの記事でも触れています。
→ 人に合わせすぎて疲れたあなたへ|自分を見失わないための心の守り方
振り回されてしまった夜はどう過ごせばいい?
それでも、振り回される日は必ずあります。
- 頭ではわかっていても、感情がついてこない
- 自然と涙が出てくる
- 時間が経っても怒りが収まらない
そんなときは、まず自分を責めないでほしいです。
怒りや傷つきは、誰にでも起こる正常な反応です。
むしろ、感じないふりをするほうが、後で大きく揺り戻してきます。
僧侶の草薙龍瞬さんは、こんなふうに伝えています。
心の状態をよく見ること、意識すること。そのことで、ムダな反応は止まり、心は静まり、深い落ち着きと集中が可能になります。
「自分の心の状態を、ただ見る」
それだけで、ムダな反応が静まっていく感覚は、夜のベッドの上でこそ試せる方法だと思います。
精神科医の水島広子さんは、もう一つ大切な言葉を残しています。
怒りを手放すためには、「正しさの綱引き」から手を放さなくてはなりません。それは、「あなたが正しくて私が間違っている」と認めることではありません。「どちらが正しいか」という「評価の次元」から脱するということです。
「私が正しくて、あの人が間違っている」と証明したい気持ちは、振り回された日に必ずやってきます。
でも、その綱引きから手を離したとき、ようやく自分の時間が戻ってくる。
明日の自分のために、今夜はもう、相手のことを考えなくていいと思います。
まとめ:嫌いな人と働く日々を少しだけラクにするために
ここまで、職場の嫌いな人や不機嫌な人と、どう距離を取りながら関わっていくかをお伝えしてきました。
要点を整理すると、次の5つです。
- 他人のことで思いわずらう時間は、人生から削られている
- 相手は変えられない。でも、自分の関わり方は変えられる
- 不機嫌は「今日の天気」と割り切る
- 観察者の自分を呼び出して、心の振れ幅を小さくする
- 離れられない前提で、心理的な距離を選んで取る
「相手のために我慢する」のではなく「自分の心を守るために、距離を取る」。
それは冷たさではなく、長く一緒に働き続けるための知恵だと思います。
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