思考

備えているから楽観できる

Shunsuke

「ポジティブに考えよう」

そんな言葉を聞くたびに、少しだけ引っかかることがあります。

ポジティブであること自体は、悪いことではないと思います。
前向きな気持ちが行動を後押ししてくれることもありますし、暗い気持ちのまま過ごすよりずっと健やかだとは思います。

でも、「すべてがうまくいく前提で行動する」のは、ポジティブとは少し違う気がするんですよね。

たとえば、こんな場面を想像してみてください。

新しい仕事を始めるとき、「きっとうまくいく」と思って準備をしない。
体調に不安があるのに、「大丈夫だろう」と放置する。
大事な約束の日に、「遅れることはないだろう」と余裕を持たずに出発する。

どれも、前向きな気持ちからの行動に見えます。
でも実際は、「うまくいかなかったときのこと」を考えていないだけかもしれません。

楽観的な人は、うまくいくことを信じつつも、うまくいかなかったときの備えをしている人だと思います。
一方で、「すべてがうまくいく前提で動く人」は、その備えを省いてしまっています。
結果として、うまくいかなかったときに、自分も周りも困ることになります。

この二つの違いは、「想像力」にあるのかもしれません。

「うまくいかないかもしれない」と想像できるかどうか。
その想像を持ったうえで、それでも前に進めるかどうか。

それが、本当の意味での楽観なのではないかと思います。

「きっとうまくいく」と信じることは素敵なことです。
でも、「うまくいかなかったとしても大丈夫」と思える状態をつくっておくことは、もっと大切なことかもしれません。

備えがあるからこそ、安心して前を向ける。
余裕があるからこそ、挑戦できる。

「最悪のケースでも、なんとかなる」

そう思える土台があるとき、人は本当の意味で楽観的になれるのだと思います。

逆に、その土台がないまま「大丈夫、大丈夫」と言い聞かせるのは、楽観ではなく、ただ目をつぶっているだけかもしれません。

楽観的でありたい。
でも、慎重さを忘れない。

その「あいだ」に、ちょうどいいバランスがあるはずです。

「最悪を想定すること」は、前向きな行為

「最悪のことを考えるのは、ネガティブじゃないか」

そう感じる人は多いと思います。

でも、最悪を想定するというのは、不安になることではありません。
「何が起きても大丈夫な自分」をつくるための、前向きな設計行為です。

その前提として、ひとつ知っておきたい視点があります。

私たちは無意識に、「発生確率が低いこと」を「起きないこと」に変換してしまいがちです。
これは「ゼロリスク幻想」と呼ばれる心理で、確率が低いものを0%として扱ってしまう傾向のことです。

でも、大事なのは「起きるかどうか」だけではなく、「もし起きたら、どれくらいのダメージがあるか」も含めて考えることです。

「発生確率 × インパクト」という視点です。

プレゼン当日にPCが起動しなくなる確率は低くても、もし起きたら大事な商談が台無しになってしまうかもしれません。
確率が低くても、インパクトが大きければ、それは「無視していいリスク」ではないのかもしれません。

ナシーム・ニコラス・タレブ氏は「反脆弱性」という概念を提唱しています。

  • 衝撃を加えると崩れてしまう人(脆い)
  • 衝撃を加えても崩れない人(頑丈)
  • 衝撃を加えると、むしろ強くなる人(反脆弱)

「壊れない」だけでなく、「壊れそうな経験を通して、もっと強くなれる」という考え方です。

そのためには、まず「壊れない土台」を先につくっておく必要があります。
成果を生み出す構造の前に、破滅しない構造をつくることが重要です。

モーガン・ハウセル氏はこう述べています。

何かに驚いたとき、人はたとえ自分の過ちを認めたとしても、「ああ、もう二度と同じミスは繰り返さないぞ」と言う。しかし実際には、予期せぬ事態が起きて失敗したときに私たちが学ぶべきなのは、「世界で起きることを予測するのは難しい」ということだ。つまり、私たちが驚くべき出来事から学ぶべき正しい教訓は、「世界にはサプライズが潜んでいる」ということなのだ。

「次は気をつけよう」ではなく、「そもそも予測できないことが起きるものだ」と受け入れること。
「このトラブルを防ごう」ではなく、「何が起きてもおかしくない」と知っておくこと。

その前提に立てると、備え方は大きく変わってきます。
それだけで、想定外に対する構えが変わってくるのではないでしょうか。

最悪を想定している人ほど、平常時には安心して挑戦できる。
「何かあっても大丈夫」という土台があるからこそ、思い切った判断ができるようになります。

「もしこれが使えなかったら?」と、一度だけ問う

一方で、完璧な準備は疲れるだけです。
大切なのは「すべてを防ぐ」ことではなく、「何かが起きても立て直せる状態」を先につくっておくことだと思います。

ひとつ試しやすい方法があるとすれば、大事な予定の前日に「もしこれが使えなかったら?」と一度だけ問うてみることです。
プレゼン資料、使うツール、交通手段——何でもよいです。

その問いをたった一回立てるだけで、気づける「保険」は意外と多いです。

たとえば、資料をクラウドにも保存しておく。
それだけで大きな保険になります。

もうひとつは、焦っても動ける初動を平常時に決めておくことです。
想定外のことが起きたとき、慌てるのは当然です。
だからこそ、「とりあえずこれだけやる」を先に決めておきます。

状況を紙に書き出す、誰かに声をかける、5分だけ手を止めて整理する——頭が真っ白になっても体が動く初動があれば、それだけで非常時の安定度は大きく変わります。

「起きたら終わること」の可能性をひとつ減らしておくと、意外と安心して前を向けるようになります。
楽観と慎重さの「あいだ」——その正体は、きっとここにあります。

あなたにとって「起きたら困ること」の中に、今すぐひとつでも備えておけるものはありますか。

ABOUT ME
Shunsuke
Shunsuke
エンジニア / 心理カウンセラー / 起業家
ひとりの未熟な人間として、現時点での思考を静かに書き残しています。
正しさよりも、気づきや安心を大切にしたい。
誰かの心が少しでもやわらぐ言葉を残せたらと思っています。

尊敬する人物はチャーリー・マンガーとウォーレン・バフェット。
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