思考

その「忙しくて」は、本当に忙しいから?

Shunsuke

「最近どう?」と聞かれて、反射的に「忙しくて」と答えてしまう。

そんなことってありますよね。

「忙しい」と言っておけば、なんとなく丸く収まります。
誘いを断りたいときも、何かを先送りにしているときも、この言葉ひとつで角が立ちにくい状態を作れます。

でも、「忙しい」と言いたがるのは、本当に忙しいからだけではないのかもしれません。

何もしていないと、落ち着かなくなることはありませんか?

予定を埋めていないと焦る。
休んでいる時間に罪悪感を覚える。

そういう感覚の奥には「何もしていない自分には価値がない」という思い込みがあるような気がします。

でも、よく考えてみると、それは少しだけおかしな話だと思います。

存在しているだけで人には価値がある。

これは、頭では誰もがわかっていることだと思います。
その一方で、価値のないことをどれだけ丁寧にやったところで、それ自体に価値が生まれるわけではありません。

たとえば、気が進まない予定を断れず、とりあえず行ってみたけど時間だけが消えてしまった日。
あるいは、頼まれたことを丁寧に仕上げたのに、誰からも必要とされていなかったと知ったとき。

時間も労力もたしかに使ったのに、自分の中には何も残らない。
そんな経験が、きっと誰にでもあると思います。

がんばって埋めた予定の中身が、本当に大切なものだったか。
時間を費やしたことのうち、意味のあるものはどれくらいだったか。

そう考えてみると、忙しさと生み出されている価値は、必ずしも比例していないことに気がつきます。

価値のないことをどんなに丁寧にやろうとも、自分の価値が上乗せされるわけではありません。
だからこそ、価値のあることだけをやったほうがいいと思います。

これは、効率を求める話ではありません。
「無駄を切り捨てて、生産性を高めましょう」という話でもありません。

「価値のあること」というのは、人によって違うはずです。
誰かにとっては仕事の成果かもしれないし、誰かにとっては家族と過ごす時間かもしれません。
ただぼんやり空を見上げる時間が、自分にとってもっとも価値のあることだという人もいると思います。

大切なのは、自分にとって価値のあるものが何かを自分で決めることです。
そして、価値のあるものに時間を使えている限り、それ以外のことを無理にこなさなくても、自分の価値は減らないということです。

がんばらないことを選ぶのは、怠けることではないと思います。
むしろ、自分の時間と心を、本当に大切なことのために残しておくための、勇気のいる選択だと思います。

「忙しくしていないと価値がない」と感じるとき、その根っこにあるのはおそらく、まだ見つけていない「自分にとって本当に大切なもの」だと思います。
それを探す時間こそが、何より価値のある時間なのかもしれません。

でも、「なぜ私たちはここまで忙しくしたがるのか」と考えたとき、もう少し深いところに根っこがある気がします。

「忙しい」という言葉の裏には、いくつかの心理が隠れているようです。

「忙しい」の裏にあるもの

「忙しい」と言うことで、「自分は必要とされている」「やるべきことがたくさんある重要な存在だ」と、無意識に自分の価値を証明しようとしていることがあります。

SNSでも、充実した毎日を送っている人が注目を集めやすい時代です。

「暇です」と言うのがなんとなく恥ずかしい。
その空気感が、「忙しい」という言葉を安全な答えにしているのかもしれません。

また、「忙しい」は何かを断るときの万能な理由にもなります。
誘いを断りたいとき、頼まれごとを引き受けたくないとき、「忙しいから」と言えば角が立ちにくい。

でも使いすぎると、本当はやりたいことまで「忙しいから」で先送りにしてしまいます。

そして、あまり認めたくないけれど、いちばん本質的な心理があります。
それは、本当に向き合うべきことから目を背けるために、忙しさで自分を埋め尽くしているということです。

『エッセンシャル思考』の著者、グレッグ・マキューン氏はこう指摘しています。

忙しく動きまわることを有能さの証だと思っている人は、考えたり眠ったりする時間をなるべく減らそうとする。しかし本当は、立ち止まる時間こそが、生産性を高めるための特効薬だ

忙しく動いていると、「何か大事なことをしている」という感覚が得られます。
でも、その忙しさが「立ち止まって考えること」を避けるための手段になっていたら——。

それは前に進んでいるようで、実は同じ場所をぐるぐる回っているだけかもしれません。

作家のphaさんもこんなことを書いています。

問題なのは、仕事がそんなに好きなわけでもないけど、やることがないから仕事をしてしまう、仕事がないと不安だ、という人だ

やるべきことがないと落ち着かない。
仕事がないと不安になる。

もし心当たりがあるなら、その忙しさは「本当にやりたいこと」が見えなくなっているサインかもしれません。
「ずっと仕事をしているから私は仕事が好きなんだ」と思いこんでいる人も多いと思います。

少しずつ忙しさから解放されるために

「忙しさを手放しましょう」と言われても、すぐには難しいと思います。
それに、忙しさをゼロにすること自体が目的ではありません。
大切なのは、その忙しさで覆い隠してきたものに、少しずつ近づいていくことです。

そのために試しやすいことを、3つだけ挙げてみます。

まず、「忙しい」と言いそうになったとき、「〇〇に時間を使っている」と言い換えてみてください。

「忙しい」のひとことは便利な反面、自分が実際に何に時間を使っているのかを見えなくします。

たとえば「忙しくて読書できない」を、「仕事と家事に時間を使っている」と言い換えてみる。
そうすると、「忙しい」でひとくくりにしていた時間の中身が見えてきます。

もし「あれ、何に時間を使っているんだっけ」とうまく答えられなかったら——。
それは、その時間を自分で選んでいなかったサインかもしれません。

自分で選んでいない時間が多いほど、本当に大切なことは後回しになっていきます。
だからこそ、一度見つめ直す価値があります。

次に、15分だけ「何もしない」時間をつくってみてください。

スマホも本も音楽もなし。
ただ座って、ぼんやりする。

忙しく動いている間は、気を紛らわせていられます。
でも手を止めると、ふだん忙しさで覆い隠しているものが浮かんできます。
目の前のことではなく、自分の心の奥にあるものを探してみてください。

そこで不安を感じるのは、わざわざ忙しさで覆ってまで、それを見ないようにしていたからです。
裏を返せば、その不安の出どころこそ、自分が見ないふりをしてきた「本当に向き合うべきもの」だということです。

そして「何もしない」を自分で選べることは、自分の価値を「何かをしていること」に結びつけない練習にもなります。

そして、先送りにしていることに1つだけ手をつけてみてください。

  • 転職について考えること
  • 友人にちゃんと連絡を返すこと
  • 将来の暮らし方を見つめ直すこと

全部やる必要はありません。
1つだけ、いちばん気になっていることに手をつけてみてください。

「忙しい」という言葉で覆い隠してきたものに、少しだけ向き合ってみる。
それだけで、忙しさの質が変わってくるかもしれません。

最後に『金持ち父さん貧乏父さん』の著者、ロバート・キヨサキ氏の言葉を紹介します。

忙しい状態を続けることで怠け続けるという形だ

忙しく動き続けることが、必ずしも勤勉とは限らない。
だとすれば、「やらないこと」を選ぶのは、むしろ前に進むための選択なのかもしれません。

今日、ひとつだけ「やらなくていいこと」を探してみませんか。
その空いた時間に何が残るか——そこに残ったものこそ、あなたにとって本当に価値のあるものだと思います。

そうやって少しずつ、自分の時間を取り戻していけたら——。
今度「最近どう?」と聞かれたとき、あなたは「忙しくて」の代わりに、何と答えたいですか?

ABOUT ME
Shunsuke
Shunsuke
エンジニア / 心理カウンセラー / 起業家
ひとりの未熟な人間として、現時点での思考を静かに書き残しています。
正しさよりも、気づきや安心を大切にしたい。
誰かの心が少しでもやわらぐ言葉を残せたらと思っています。

尊敬する人物はチャーリー・マンガーとウォーレン・バフェット。
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