「最悪を想定する」は後ろ向きじゃない|仕事で崩れないための備えの考え方
「さすがにそれは起きないよね」
仕事をしていると、こんな言葉を耳にすることがあります。
でも、起きそうにないことほど、起きたときの影響は大きいです。
たとえば:
プレゼン当日にパソコンが起動しない。
重要な会議の直前に、資料が最新ではないと判明する。
メイン担当者が急に休んで、誰も経緯を知らない。
締切当日にシステムメンテナンスと日程が被っていた。
どれもめったに起きないことです。
でも、起きたときのダメージは大きい。
そして、「起きないだろう」と思っていたからこそ、何の準備もしていない。
この記事では、最悪を想定することの本当の意味と、仕事で崩れないための備え方について考えていきます。
「さすがに起きない」が起きたとき、なぜ崩れてしまうのか?
無意識に、「発生確率が低いこと」を「起きないこと」に変換してしまいがちです。
これは「ゼロリスク幻想」と呼ばれる心理で、確率が低いものを0%として扱ってしまう傾向のことです。
でも、冷静に考えると、大事なのは「起きるかどうか」だけではありません。
「もし起きたら、どれくらいのダメージがあるか」も含めて考える必要があります。
つまり、「発生確率 × インパクト」という視点です。
たとえば:
プレゼン当日にPCが起動しなくなる確率は低いかもしれません。
でも、もし起きたら?
大事な商談が台無しになり、信頼を失い、チーム全体に影響が出る。
確率は低くても、インパクトが大きければ、それは「無視していいリスク」ではありません。
ロルフ・ドベリ氏は著書の中でこう述べています。
考えられないような偶然とは、めったに起こらないものの、少しでも起こる可能性のある出来事のことを言う。それが起こっても、驚くことはない。驚くとすれば、むしろ一度も起こらなかった場合である。
「まさか」は、いつか必ず起きます。
驚くべきは「起きたこと」ではなく、「今まで一度も起きなかったこと」のほうなのかもしれません。
そして、私たちが崩れてしまう本当の原因は、トラブルそのものではなく、「備えていなかったこと」にあるのだと思います。
感情的になって判断を誤りやすい場面については、こちらの記事でも解説しています。
→ 感情的な判断で後悔しないために|冷静さを取り戻すシンプルなルール
最悪を想定することは、なぜ「後ろ向き」ではないのか?
「最悪のことばかり考えるのは、ネガティブなんじゃないか」
そう感じる方もいるかもしれません。
でも、最悪を想定するというのは、不安になることではありません。
「何が起きても大丈夫な自分」をつくるための、前向きな設計行為です。
ナシーム・ニコラス・タレブ氏は、「反脆弱性」という概念を提唱しています。
普通は、「打たれ弱い人」の反対は「打たれ強い人」だと思いますよね。
でもタレブ氏は、もう一段階先があると言います。
- 衝撃を加えると崩れてしまう人(脆い)
- 衝撃を加えても崩れない人(頑丈)
- 衝撃を加えると、むしろ強くなる人(反脆弱)
「壊れない」だけでなく、「壊れそうな経験を通して、もっと強くなれる」という考え方です。
そのためには、まず「壊れない土台」を先につくっておく必要があります。
成果を生み出す構造の前に、破滅しない構造をつくる。
これは投資の世界でよく言われることですが、仕事においてもまったく同じだと思います。
たとえば:
新しいプロジェクトに挑戦するとき。
「うまくいくための準備」ばかりに目が向きがちですが、「うまくいかなかったときに、どうリカバリーするか」を先に考えておく。
それだけで、安心感がまったく違ってきます。
最悪を想定している人ほど、平常時には安心して挑戦できます。
「何かあっても大丈夫」という土台があるからこそ、思い切った判断ができるようになるのではないでしょうか。
心の余裕と備えの関係については、こちらの記事も参考になるかもしれません。
→ 心の余裕の作り方|余裕がない原因と「スラック」で心のゆとりを取り戻す方法
仕事で「崩れない構造」をつくるには?
では、具体的にどう備えればいいのか。
完璧な準備をしようとすると、それだけで疲れてしまいます。
大切なのは、「すべてを防ぐ」のではなく、「何が起きても致命傷にならない状態」をつくることだと思います。
「防ぐ」のではなく「壊れても続けられる」設計にする
想定外の出来事を100%防ぐことは不可能です。
だからこそ、「起きたときに壊れない仕組み」を先につくっておくことが大事です。
たとえば:
資料は常にクラウドに保存して、どの端末からでもアクセスできるようにしておく。
担当業務の概要を共有ドキュメントに残しておく。
重要な会議の前日に、一度だけ「もしこれが使えなかったら?」と考えてみる。
どれも小さなことですが、こうした「保険」があるだけで、いざというときの被害は大きく変わります。
ポイントは、「トラブルを防ぐこと」ではなく、「トラブルが起きても致命傷にならない仕組み」を先につくっておくことです。
完璧な予防を目指すと、準備だけで疲弊してしまいます。
でも、「最悪でも立て直せる」という状態をつくることなら、意外とシンプルにできます。
「想定外にはパターンがある」と知る
想定外の出来事は、毎回まったく違う形で現れるように見えます。
でも実は、起きやすい「状況」には共通点があります。
- 余裕がないとき
- 一人に業務が集中しているとき
- 確認を後回しにしているとき
「問題そのもの」ではなく、「問題が起きやすい地盤」に目を向けてみると、事前に気づけることは意外と多いです。
モーガン・ハウセル氏は著書の中でこう述べています。
何かに驚いたとき、人はたとえ自分の過ちを認めたとしても、「ああ、もう二度と同じミスは繰り返さないぞ」と言う。しかし実際には、予期せぬ事態が起きて失敗したときに私たちが学ぶべきなのは、「世界で起きることを予測するのは難しい」ということだ。つまり、私たちが驚くべき出来事から学ぶべき正しい教訓は、「世界にはサプライズが潜んでいる」ということなのだ。
「次は気をつけよう」ではなく、「そもそも予測できないことが起きるものだ」と受け入れること。
その前提に立てると、備え方がずいぶん変わってきます。
「このトラブルを防ごう」ではなく、「何が起きてもおかしくない」と知っておくこと。
それだけで、想定外に対する構えが変わってくるのではないでしょうか。
「焦っても動けるルーティン」を持つ
想定外のことが起きたとき、焦るのは当然です。
「慌てないようにしよう」と言われても、なかなかそうはいきません。
だからこそ大切なのは、「焦った状態でも機能する初動」を、平常時に決めておくことです。
- まず、状況を書き出す
- まず、誰かに声をかける
- まず、5分だけ手を止めて整理する
これだけでも、非常時の初動はかなり安定します。
頭が真っ白になったとき、「何をすればいいか」を考える余裕はありません。
でも、「まずこれだけやる」と決めてあれば、考えなくても体が動きます。
平常時に決めたルーティンが、非常時の自分を助けてくれます。
焦って動いてしまいがちな方には、こちらの記事も参考になるかもしれません。
→ 焦って行動して後悔する前に|「何もしない」という賢い選択
まとめ:想定外は、いつか必ずやってくる
- 最悪を想定することは、ネガティブではなく「壊れない設計」をつくる前向きな行動
- 「発生確率 × インパクト」で、冷静にリスクを見る習慣を持つ
- 完璧に防ぐのではなく、壊れても続けられる構造をつくる
- 想定外には「起きやすいパターン」がある。地盤の弱さに目を向ける
- 焦っても動ける初動ルーティンを、平常時に決めておく
想定外の出来事は、いつか必ずやってきます。
だからこそ、来たときに壊れない設計をしておきたいですよね。
あなたにとって「起きたら終わること」は何でしょうか。
その可能性をひとつずつ減らしていくことが、いちばん大切な備えなのかもしれません。
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参考文献
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