「考えなくていい」という豊かさ

実家を離れて一人暮らしを始めたとき、多くの人が親のありがたさに気づくと思います。

  • 洗濯物をいつ干すか
  • 夕飯の献立をどうするか
  • 洗剤がそろそろ切れそうだから買わなきゃ

実際に手を動かしている時間よりも、「あれをしなきゃ」「これも忘れずに」と頭の中で段取りしている時間のほうが、ずっと長かったりしますよね。

実家にいた頃は、そんなことを考える必要がありませんでした。
よくよく考えると、ありがたかったのは「時間があったこと」ではなく、「考えなくてよかったこと」だったのだと思います。

「手が空く」ことと「頭が空く」ことは、似ているようで全然違います。

手が空いても、頭の中では次にやることを考え続けていることがあります。
逆に、手は動いていても、頭が穏やかなときもあります。

本当の意味での「楽になる」は、おそらく後者のほうなのだと思います。

ヘンリー・デイヴィッド・ソローは、こんな言葉を残しています。

「人の豊かさは、気にしないでいられるものの数に比例する」
——ヘンリー・デイヴィッド・ソロー『ソロー「森の生活」を漫画で読む』
  • お金をたくさん持っていること
  • モノに囲まれていること
  • 予定がぎっしり埋まっていること

一般的には、そういったものが「豊かさ」だと思われがちです。

でも、ソローの言葉に照らしてみると、豊かさの本質はむしろ逆なのかもしれません。

気にしなくていいことが多いほど、人は豊かである。

考えてみると、日常が幸せだと感じるときって、「気にしないでいられることしかない」ときなのではないですか?

  • お金のことを気にしなくていい
  • 健康のことを気にしなくていい
  • 人間関係のことを気にしなくていい

そういう状態が、いちばん穏やかで、いちばん幸せなのだと思います。

逆に、どれかひとつでも「気にしなきゃいけないこと」が増えると、途端に日常が窮屈になります。
気にしなきゃいけないことが頭の片隅に残っていると、何をしていても心から楽しめなくなってしまいますよね。

だからこそ、「気にしなきゃいけないこと」を意識的に減らしていくことは、とても大切なことだと思います。

では、どうすれば減らせるのでしょうか。
方法はきっと人それぞれですが、ひとつ思うのは、誰かに任せることかもしれません。

自分ひとりで抱え込まず、信頼できる人に委ねることで、頭の中に余白が生まれます。
任せるのが苦手な人もいるかもしれません。でも、任せるというのは手を抜くことではなくて、自分の頭を本当に大切なことのために空けておくことだと思います。

ソローは別の場所でこうも書いています。

「自分の人生に、広い余白を持ちたい」
——ヘンリー・D・ソロー『孤独は贅沢』

私たちは、つい「何かを手に入れること」で豊かになろうとしてしまいます。
でも、本当は「何かを手放すこと」で豊かになれることもあるのかもしれません。

考えないといけないことを、ひとつずつ減らしていく。

それは地味で、目に見えにくい変化です。
でも、きっと日常の景色を少しずつ穏やかにしてくれると思います。

あなたの頭の中にある考えないといけないことを、ひとつだけ手放してみませんか。


関連記事

次に読む

  1. 減点方式の働き方に疲れたら

    日本人の働き方は、減点方式だとよく言われますよね。
    もちろんすべての職場がそうではないと思いますが、どこかで心当たりがある人は多いのではないでしょうか。

    出来上がってくるものが100点である前提で、そこからどれだけミスがあるかを探していく。
    そんな見られ方をしている気がします。

    一方で、欧米は加点方式だと言われます。
    「どんな工夫をしたか」「どんな成果があったか」を積み上げて評価する傾向があり、多少のミスは「チャレンジした証」として許容されるのだそうです。

  2. 指摘するより自分でやるほうがうまくいく

    「そんな細かいことまでうるさいな」

    誰かに対して、そう感じた経験はありませんか?

    職場で、家庭で、ちょっとしたことを指摘されるたびに、なんだかモヤッとする。
    言っていることは正しいのかもしれない。でも、素直に受け取れない。

  3. 自由と責任は釣り合っている

    「もっと自由に働きたい」

    そう思ったことはありませんか?

    上司の指示に従うのではなく、自分の判断で動きたい。
    決められた時間に出社するのではなく、自分のペースで働きたい。