無駄な投資を防ぐために——サンクコスト効果と見切りをつける判断
エンジニアをやっていると、「時間をかけて作った機能がほとんど使われない」なんてことがよくあります。
そこで、「使われていないなら削除しよう」となれば良いのですが、それがなかなか難しいんですよね。
「あれだけ時間をかけたのに削除してしまうのか?」と心が抵抗します。
せっかく料理を用意した誰も食べないからと言ってそのまま捨てるような感覚です。
いくら料理が冷めていて、もう食べようが食べまいが関係ない状態でも、捨てる決断はそう簡単にはできないですよね。
多くの人が、この感覚には頷けるのではないでしょうか。
なぜ捨てられない?サンクコスト効果という不思議
ここで登場するのが「サンクコスト効果」という心理的な罠です。
サンクコスト(埋没コスト)とは、すでに投じてしまい、二度と戻ってこないコストのことです。
つまり、過去に費やした時間やお金、エネルギーなどが、今後の意思決定に影響を及ぼします。
機能が使われていないとわかっていても、「あともう少し手を加えればきっと利用されるはず」「少し改良すれば活用できるかもしれない」と淡い期待を抱き、新たなリソースを投入してしまう──私たちはそんな罠にはまってしまいます。
冷静に考えれば、この判断はおかしいと分かりますよね。
過去に使った時間や費用は、未来の成功可能性とは無関係です。
けれども「もしかしたら」「もう少しだけ頑張ってみたら」という心の声は非常に強力で、感情が論理をねじ曲げてしまいます。
プログラムの世界では、使われない機能を放置することは「精神的負債」を増やすことと同義です。
コードは時間が経つにつれ陳腐化し、将来のメンテナンス時には混乱を招く可能性が高まります。
利用されない機能は早めに削除した方が、後々のトラブル回避になるはずなのに、それがなかなかできない。
「せっかく作ったのに」という気持ちが、削除から私たちを遠ざけるのです。
サンクコスト効果が引き起こす滑稽なジレンマ
面白いのは、削除を宣言した瞬間、途端にユーザーが「あれ、無くなるのは困るかも」と突然、その機能を使い出すケースがあることです。
まるで、要らないと思っていた服を「明日リサイクルに出す」と決めた瞬間に「やっぱり着るかも」と思い始める心理と似ていますよね。
人は不思議なもので、「もう捨てる」と聞くと、とたんに「それって貴重品だったんじゃ?」と再評価を始めてしまいます。
ユーザーがこうなってしまうと、開発者も「やっぱり少し改善すればよかったんじゃないか?」と混乱してしまいます。
サンクコスト効果の二次災害ですね。
こうした現象は、エンジニアにとっては滑稽でありながら少し切ない話です。
冷静に考えれば、捨てると決める前は誰も見向きもしなかった機能ですから、未来永劫誰も使わない方が健全な結末かもしれません。
でも「最後の最後に注目されてしまった」という微妙な状況は、判断をますます複雑にしますね。
「もったいない」の先へ進むために必要な視点
とはいえ、ここで大切な視点があります。
過去に費やした時間やリソースは、未来の決断においては全く意味を持ちません。
今行うべき判断は、「これ以上投資しても改善する見込みがあるのか?」「この機能を残すことで、将来的な保守コストが増大しないか?」といった現実的な観点に基づくべきです。
使われない機能を潔く削除できれば、アプリケーションの動作は速くなり、メンテナンスは楽になり、自分自身の精神的負担も減ります。
その結果、本当に注力すべき新機能や改善に集中できます。
「もったいない」という気持ちを捨て、明るい未来に投資するという選択は、何事においても健全な対応だと思います。
料理は捨てるとき罪悪感が残りますが、コードはただのデータです。
倫理的問題ではなく、気持ちの問題に過ぎないですね。
それならば、心を軽やかにして、不要な機能を消し去る勇気を持ってみましょう。
さあ、行動しよう!サンクコストに惑わされずに
あなたの中にも、長らく棚晒しになっているものはありませんか?
なぜか残してしまっているものはありませんか?
もし心当たりがあるなら、思い切って捨てることを検討してみましょう。
「捨てる」という選択は、あなたを「過去」に縛る鎖から解き放ちます。
不要なものを取り除くことで、未来に向けてそのリソースを再配分できます。
これにより、新しい挑戦へリソースを割くことができ、その結果として全体が成長する可能性が高まります。
長期的に見れば、サンクコストに惑わされずに合理的な判断を貫く姿勢が、あなたを成功に導いてくれるはずです。
もちろん、「みんなが今、騒ぎ始めたということは、ちょっと考え直す価値があるかも?」と再検討することは悪いことではありません。
ただ、そこでも過去の努力に引きずられず、あくまで客観的な判断に従いましょう。
一度捨ててみれば、目の前の風景がガラリと変わるかもしれません。