幸福を求める前に、不幸を取り除く——否定神学から学ぶシンプルな生き方
あなたは「神が何であるか」を説明できますか?
突然、そんなこと言われても、見たことがないので説明できないですよね。
おそらく、あなたに限らず、すべての人が明確には説明できないと思います。
一方、「神が何でないか」だったらどうでしょう?
こちらはすべての人が「あの人は神ではない」「あの動物は神ではない」といったように明確に説明できるのではと思います。
ギリシャ人やローマ人、中世の思想家たちは、この思考法を「否定神学」と呼びました。
「否定の道」と呼ばれることもありますね。
この思考法はあらゆる場面で役立ちます。
私はこの思考法が好きなんですよね。
何事にもアップサイド(良い面)とダウンサイド(悪い面)が存在します。
そのときに、「アップサイド」をつかみにいくのではなく、「ダウンサイド」を取り除くようにするアプローチですね。
例として、あなたの幸福について考えてみましょう。
あなたは何をしたら幸福になりますか?
何を手に入れたら幸福になるのでしょう?
幸福は人それぞれで、他者の考える幸福があなたにとっての幸福とは限らないですよね。
あなたのためを思って、誰かがあなたに対して施したとしても、その行為であなたが幸せになれるとは限りません。
一方で、あなたは何をしたら不幸になりますか?
嫌な仕事、嫌いな上司との会話、借金、孤独——これらは誰にとっても不幸であり、取り除けば誰でも今よりも確実に幸福になれますよね。
具体的に考えてみるとわかるとおり、「ダウンサイド」は「アップサイド」よりも明瞭で見つけやすいんですよね。
また、「ダウンサイド」を取り除いていくと、結果として「アップサイド」だけが残ります。
古代ギリシアの哲学者、アリストテレスも次のように述べています。
賢人が目指すべきは、幸福を手に入れることではなく、不幸を避けることだ
Think Smart 間違った思い込みを避けて、賢く生き抜くための思考法 —— ロルフ・ドベリ
まさに「否定神学」そのものですね。
過度なレバレッジをかけて投資で失敗した人もいれば、必要以上に大きなリスクをとって倒産した会社もあります。
どんなに才能があっても、結局は運が必要になるというのも事実です。
私たちは何事においても、第一に生き残ることが大切です。
まずはダウンサイドを避けつつ、生き残ることを優先しなければいけません。
生き残っていれば、何か特別なことはしていなくても幸運に恵まれることはありますからね。
作家のナシーム・ニコラス・タレブ氏も次のように語っています。
“有能であること”と”生き延びること”はまったく別の能力だ。そして、前者には後者が必要になる。破滅するのは、何としても避けなければならない
サイコロジー・オブ・マネー 一生お金に困らない「富」のマインドセット —— モーガン・ハウセル
あなたの人生のダウンサイドには何がありますか?
人生のアップサイドを探し求めるのではなく、まずはダウンサイドを取り除くことに集中してみるのはいかがでしょうか?