過剰な行動が招くワナ——立ち止まる勇気と「何もしない」という選択

サッカーのPKでは、大きく分けて右、左、中央のどこかへシュートされますよね。
つまり、ゴールキーパーには「右へ飛ぶ」「左へ飛ぶ」「中央に留まる」の3つの選択肢があります。
でも、実際の試合を見てみると、ほとんどのゴールキーパーが左右どちらかに飛んでいて、中央に留まることはほとんどないらしいです。
なぜ彼らは中央に留まらないのでしょう?
「中央に留まる」ということは「何もしない」ということなんですよね。
何もせずにゴールを許すより、どちらかに飛び込んでゴールを許したほうが見栄えが良いわけです。
このように、そこまで動く必要がないときにも過剰に動いてしまう心理を「過剰のワナ」といいます。
私たちは失敗したときに、少しでも自分の行動を正当化したくなるんですよね。
何もしていなかったら、正当化するのも難しいです。
私たちは、実はあらゆる場面でこのワナにハマってしまっているのかもしれません。
「過剰のワナ」が潜むあらゆるシーン
仕事でも、日常のちょっとした行動でも、気づかないうちに“余計な行動”をしてしまうことって多いですよね。
たとえば、
- 無駄なことを繰り返して赤字を広げる経営者
- 売買を繰り返しすぎて手数料が増大する投資家
- やることを作り出すために不要な会議を設定する会社員
など、あなたの周りでも、このような人がいるのではないでしょうか?
じっとして状況を見極めるよりも、まず動いてしまうほうが安心できるから不思議ですよね。
働きすぎている多くの人が「過剰のワナ」にハマってしまっていると思います。
私たちは「動いている自分=頑張っている自分」と思い込んでしまいます。
しかも、自分で動くことによって多少なりとも変化があると「やっぱり行動しないと始まらないよね」と納得しやすいです。
たとえその変化が悪い方向でも、とにかく行動すれば「何もしてない自分」よりもマシだと感じてしまいます。
何もしないことの価値を知る
でも、実際は状況がよく分からないときこそ「下手に動かないほうがいい」というケースは多いです。
行動しないことは怠惰だと捉えられがちですが、それは本当に正しい考えなのでしょうか?
むしろ、現実を見ずに立ち止まることなく、闇雲に行動し続けることのほうが怠惰だと思います。
じっとしていると、確かに「自分は無力かもしれない」と不安になりますよね。
しかし、それはただの思い込みかもしれません。
人生において“見逃し三振”のような厳格なルールは存在しないです。
そもそも、すべてのチャンスを取りこぼさずにキャッチし続けるなんて不可能ですよね。
むしろ大切なのは、本当に「今、動くべきかどうか」を冷静に見極めることだと思います。
選択を誤ると、場合によっては大きく後悔するはめになります。
一方で、何もしないからといってあなたの価値が下がるわけではありません。
行動力や能力だけが人間の価値を決める基準ではないですよね。
大切なのは、冷静に考えて最適なタイミングで動くことです。
そして、やるべきことがないと感じたら、思い切って“何もしない”という選択肢を取れる勇気です。
「過剰のワナ」から抜け出すために
では、具体的にどうすれば「過剰のワナ」から抜け出せるでしょう?
- まずは現状を客観視する:今自分が置かれている状況において、本当に行動が必要なのかを落ち着いて振り返るクセをつけましょう。数字や客観的データがあるなら、それを見て判断するのも効果的です。
- 行動しないリスクと行動するリスクを天秤にかける:「動いたほうがいいのか」「何もしないほうがいいのか」を比較することで、“行動しない”ことの価値にも気づけるようになります。
- 『やること』だけでなく『やめること』もリストアップしてみる:やることリストだけでなく、「今はやめたほうがよさそうなこと」を明確に言語化すると、過剰な行動を抑制しやすくなります。
- 信頼できる人からのフィードバックをもらう:自分では「絶対必要だ!」と思っている行動でも、他人から見ると「本当に必要?」と疑問がつくかもしれません。別視点からアドバイスを受け取れる体制を整えると、余計な動きを避ける助けになります。
こうしたプロセスを踏むだけでも、「むやみに飛び込まなくていいんだ」と安心感が生まれます。
そして、いざというとき行動するためのエネルギーも温存できますね。
余計なことをしない勇気が未来をひらく
私たちは「とにかく行動するべきだ」と無意識に突っ走ってしまいます。
もちろん、行動力は素晴らしい武器となりますが、状況次第ではそれが“過剰な動き”となり、結果的に損をしてしまうこともあります。
だからこそ、いったん立ち止まって「本当に今は動くべき?」「何もしない選択はないの?」と自問する習慣をつけるのが大切です。
運命のチャンスは取りに行かなくても案外やってくるものです。
仮に見逃してしまっても、その先にはまだまだ別のチャンスが転がっています。
いちばん怖いのは、自分が何をしているのかをよく分からないまま動き続けてしまうことです。
「過剰のワナ」に足を取られると、せっかくの機会をうっかり台無しにするリスクも高まります。
そんなとき、「何もしない」という選択肢を取れる勇気こそが、あなたの未来をより豊かなものにしてくれるはずです。
いざというときにしっかり飛び込めるよう、動かずに備える時間を大切にしてみてくださいね。
