忙しさに流されない——成果と余裕を両立する働き方の考え方
かつて勤めていた会社で、「ハイパフォーマーを目指す」という目標が掲げられていました。
ハイパフォーマーの定義は、「一般的な成果の3倍以上の成果を上げる人物」。
3倍以上というと、いかにもやる気に満ちていて、ある意味では「スーパーヒーロー」みたいに聞こえますよね。
もし本当に3倍の成果を出せるなら、勤務時間が1/3になったり、給料が3倍になったりしても良いと思うんですよね。
しかしながら、そんな甘い話はどこにも転がっていませんでした。
当然のように業務時間はそのままで、報酬だって特に跳ね上がるわけでもない。
むしろ、「3倍働け」という暗黙のメッセージが透けて見えるような制度だったわけです。
「高み」を目指すはずが、ただの「負担増し」?
冷静に考えてみると、「ハイパフォーマー」という目標は、社内制度と合わせて見るとかなり残酷なものですよね。
3倍努力しても、手に入るのは同じ給与、同じ労働時間。
結局、理想的なパフォーマンスという名目で、社員が疲弊し続ける仕組みに思えてしまいます。
私が幸運だったのは、この仕組みに対して素早く「これはどう考えてもおかしいぞ?」と気づくことができた点でした。
気づいたあとは、「目標を鵜呑みにしない」姿勢を貫き、自分なりに時間をコントロールする術を身につけていきました。
自分のための時間術――自由を取り戻すテクニック
もし「成果を3倍出せ」と言われたら、あなたならどうしますか?
多くの人が、「仕方ない、がんばるか」と自分自身を追い込んでしまうかもしれません。
しかし、それは自分をすり減らすだけです。
私は違う方法を考えました。
たとえば、5日あれば余裕をもって終わる仕事があったとして、あえて「5日かかります」と見積もりを出し、実際には2~3日で仕上げます。
すると、計画上は5日間あなたに割り当てられているので、残りの2~3日は「自由時間」が発生しますよね。
そこを有効に使えば、心の余裕が生まれます。
4日目がまるっと空けば、コーヒー片手に読書するもよし、独自の勉強時間に当てるもよし、クリエイティブなアイデアを練るもよし。
もちろん、環境が許せばですが——。
忙しい業務の合間に生まれる小さな「ゆとり」は、働く人にとって貴重な時間です。
その時間を自分のために使うことは、決して悪いことではありません。
こうした時間術には、いくつかのメリットがあります。
- 努力次第で自由時間が作れる:あなたは単に頑張るだけではなく、「どう頑張れば時間を生み出せるか」を戦略的に考えることになります。その工夫が日々のモチベーションにつながります。
- 依頼者にとっては予定よりも早く終わっている:依頼主からすれば、5日後に完成するはずの仕事が4日目の終わりに完了報告されれば喜んでくれるはず。早すぎて逆に疑われる?いえいえ、その心配よりも「この人は仕事ができる」と評価が上がる可能性のほうが高いでしょう。
- 問題があっても余裕を持って対応できる:計画より早く終わらせていれば、途中で何かトラブルが起きたとしても、余裕があるので落ち着いて対処できます。慌てず冷静に問題解決に挑める、これは精神衛生上も大きいですね。
- 後続のスケジュールにゆとりができる:作業が早く終われば、次のタスクに取りかかる前に一息つけます。これが積み重なれば、全体のスケジューリングがスムーズになり、疲弊しにくくなります。
自分も他者も幸せに――行動する前に知っておくべきこと
ここで注意しておきたいことは、生み出した余裕の時間に浮かれて、「じゃあ、次の仕事の納期も前倒ししよう!」と考えないことです。
なぜなら、「予定を早める」ことは、ある意味「スケジュールを守れていない」ことにもなるからです。
無理にスピードアップを繰り返すと、そのうち「この人は何でも早くできるから、もっと詰め込もう」と逆手に取られてしまうかもしれません。
むしろ、早く終わらせたら、その成果に見合った自由時間を謳歌しましょう。
「時間泥棒」みたいに感じますか?
そんな罪悪感を抱く必要はありません。
あなたは十分な成果を上げているのですから、その見返りとしてのオフタイムを得るのは当然の権利です。
さらに、余裕があるときに同僚の手伝いをするのも有効な手段です。
あなたが「頼れる存在」になることで、将来的に彼らはあなたへの信頼と感謝を示してくれるはずです。
「助け合いの精神」は、チーム全体の士気を上げ、結果的にあなた自身の働きやすい環境を作ることにつながります。
自分のペースを取り戻し、豊かに働くために
「ハイパフォーマー」という言葉の響きに惑わされる必要はありません。
3倍の成果を求められても、それが正当な報酬や時間短縮につながらないなら、そのまま鵜呑みにするのは得策とはいえないですね。
逆に、あなたが自分のペースや時間をコントロールして、余裕を生み出せばどうでしょう。
結果的に、あなたはストレスを減らしつつ、仕事のパフォーマンスを良い方向に引き上げることができます。
そして、その余裕が新たな発想力や人間関係の改善、ひいては長期的な成長につながります。
- タスクの見積もりを考え直す:少し余裕を持った期限設定をして、実際は短時間で片付ける戦略を練ってみましょう。
- 余裕時間の活用法を考える:空いた時間で何をするか、あらかじめ考えておくと有意義な休息やスキルアップに繋がります。
- 周囲との信頼構築:余裕ができたら同僚を助けたり、新しい提案をしてみたり——。時間の余力が、あなたをチームにとって不可欠な存在へと導きます。
決して無理をして「3倍働く」必要はありません。
あなたが賢く時間を使い、余裕を作り、自分らしさを発揮することで、より健やかで豊かな働き方が実現できるはずです。
今日から小さな工夫を始めてみませんか?