余裕がもたらす心のゆとり——スラックの重要性
空腹で物事に集中できないという状態は、誰もが一度は経験したことがりますよね。
第二次世界大戦中、アメリカのミネソタ大学で「ミネソタ飢餓実験」という臨床研究が実施されました。
心身ともに健康な男性を意図的に飢餓状態にし、その影響を調査するものでした。
結果として、被験者たちは食べ物のことしか考えられなくなったと言います。
現代でも、ダイエットを理由に極度のカロリー制限を行う人がいますが、これは身体だけでなく脳にも大きな影響を与えています。
カロリーを極端に制限すると、脳は食べ物のことしか考えられなくなってしまうんですよね。
このように、ひとつのことしか考えられなくなった状態を「トンネリング」と呼びます。
この現象は、食べ物に限ったことではありません。
お金や時間にも当てはまります。
お金がない人は次の支払いのことしか考えられず、時間がない人は目の前の仕事を終わらせることしか考えられなくなります。
一方で、トンネリングを起こすと集中力が高まるという側面もあります。
たとえば、「この1時間で仕事を終わらせよう」と思っていたら、いつも以上に集中できたという経験はないですか?
他に欠乏がない状態で仕事の納期を意図的に早めることは、賢い欠乏の使い方と言えますね。
ただ、これは欠乏の対象がひとつの場合に限られます。
同時に多くの欠乏が起きても、ひとつのことにしか集中できないですからね。
一度欠乏に陥ってしまうと、自分がその状態にあることを認識するのは難しいものです。
欠乏から抜け出すためには、長期的な視点で物事を考える必要があります。
- このダイエットを続けていけば、1年後に今よりも痩せているのか
- 同じ生活水準で過ごして、1年後に貯金は増えているのか
- このペースで働き続けて、身体は保つのか
将来を見据えて考えることも大切ですね。
健康、お金、時間の余裕は心の余裕につながります。
心の余裕があれば、トンネリングを起こさずに正しい判断ができます。
これらの余裕を「スラック」と呼びます。
健康にスラックがあれば、いつでも好きなものを食べられます。
お金にスラックがあれば、欲しいものをいつでも買えます。
時間にスラックがあれば、やりたいことをいつでも実現できます。
豊かでバランスの取れた生活を送るために、何事にもスラックを用意しておきたいですね。