起業家の過信——組織全体の力を重視する思考法
ビル・ゲイツといえばマイクロソフト、マーク・ザッカーバーグといえばメタ(旧Facebook)、イーロン・マスクならテスラやスペースX——それぞれの名前を聞いただけですぐに企業の名前まで思い浮かぶ有名なCEOがいますよね。
彼らのカリスマ性は目を引くものがあり、世界中から注目が集まるのも当然です。
しかし、それだけでは「企業の本質」をすべて捉えているとは限りません。
華やかなニュースには、どうしても主役の経営者ばかりが映りがちです。
企業の成功要因は“リーダーの手腕だけ”と思われがちですが、本当にそうなのでしょうか?
CEOのカリスマだけではない——本当の成功要因とは?
どんな企業でも、CEOにはスポットライトが当たりがちです。
ビル・ゲイツの決断力やマーク・ザッカーバーグの先見性、イーロン・マスクの大胆さは、確かに企業の成長を牽引する大きな力になってますよね。
メディアも「リーダー次第で会社は変わる」というストーリーを好むため、どうしても経営者だけが“ヒーロー”扱いされがちです。
ただ、私たちが見落としてはならないのは、会社が大きく成功するとき、そこには表には出ない無数の社員や、企業文化、戦略、そして時には運すらも密接に絡み合っているという事実です。
経営者一人の華々しい活躍だけではなく、組織の総合力が企業を支えているのですね。
もちろんCEOのリーダーシップは大切です。
魅力的なビジョンを提示し、それに向かって社員を動かす原動力となりますからね。
ただし、それはあくまで“スタートライン”に過ぎません。
たとえば、優秀なCEOが複数の事業を同時並行で成功に導けるかといえば、現実はそう簡単ではありません。
もし仮に「ひとりの天才CEOがいれば、どんなビジネスも成功に導ける」のであれば、世の中には失敗企業が存在しなくなるはずですよね。
しかし、起業から10年後に生き残っている企業は、わずか10%以下と言われています。
この事実だけでも、“経営者だけ”に成功の要因を求める考え方はやや単純すぎると言えそうです。
失敗から学ぶ、表舞台の裏に隠れる真の価値
私たちは成功した企業や経営者の話をよく耳にします。
テレビやネットのニュースでは、連日「○○社の新サービスが話題に」「△△氏、画期的な技術で注目の的」など、きらびやかな情報が飛び交っていますよね。
すると、どうしても成功談だけが私たちの記憶に刻まれていきます。
しかし、その裏で多くの失敗が積み上がっていることを忘れてはいけません。
数少ない圧倒的な成果を上げた企業に対して、数え切れないほど多くの企業が姿を消しています。
成功がひときわ輝いて見えるのは、そこに“無数の失敗”があるからです。
失敗企業の“墓参り”をしてみれば、成功企業が持つ本当の強みが見えてくるかもしれません。
「自分ならうまくいく」という根拠のない自信を持つ起業家も少なくありません。
もちろん、自信がなければ起業すらしないでしょうし、ある程度のポジティブさは必要だと思います。
ただ、一歩間違えれば現実を見誤り、取り返しのつかない失敗を招きかねません。
ビジネスの世界では、冷静な検証と分析が不可欠です。
「直感で勝負!」が当たる場合もありますが、それだけに頼っていては危険ですね。
華やかなスターCEOのイメージに魅了されすぎて、「あの人がやれば成功するはず」と盲信してしまうと、自分の置かれた環境が持つ可能性を十分に活かせないかもしれません。
失敗の裏で支えている企業文化・組織力
ひとくちに“企業”といっても、その中身は多種多様です。
現場のエンジニアから営業担当、バックオフィスや総務、さらには日々の雑務に至るまで、さまざまな領域でプロフェッショナルたちが活躍しています。
そのようにして培われる企業文化は、同じ業界であっても企業ごとに全然違いますよね。
企業文化が良好な組織は社員のモチベーションが高く、挑戦を恐れない空気があります。
失敗を咎めるのではなく、そこから学ぶ文化があるかどうかが重要です。
そうした文化が土台となってこそ、リーダーシップがより一層輝くと思います。
「CEOが優秀ならすべてがうまく回る!」と信じたい気持ちもわかりますが、現実には、優秀なCEOがいても組織全体の文化が脆弱だと成果を出しづらいです。
CEOの存在感は確かに大きいですが、その周囲にいる人々と組織が機能しなければ“本当の成果”にはつながりません。
むしろ、CEOが誰であろうと成果を上げられる企業こそが、素晴らしい企業だと思います。
経営者だけではなく“すべて”を見てみよう
もし、これからあなたが企業の情報を調べたり、ビジネスの評価をしたりする機会があるなら、どうか経営者だけに目を奪われないようにしてください。
企業の歴史や社員の働き方、組織の文化、戦略の方向性、そして実際の成果や失敗のデータなど、あらゆる角度から会社を眺めると、見えてくるものがまったく違ってきます。
「リーダーの個性や業績にしか興味がなかった」という方は、今日から少しだけ視野を広げてみてはいかがでしょうか?
想像している以上に、企業には多彩なドラマが詰まっています。
スター的なCEOの足跡も非常に魅力的ですが、一歩引いてみると、私たちは成功例ばかりを収集していることに気づくかもしれません。
そこには無数の失敗ストーリーも埋もれています。
成功企業を見学するよりも、失敗企業の“墓参り”をしてみたほうが、学びは多いと思います。
なぜ失敗したのか、経営者の決断はどうだったのか、組織文化に問題はなかったのか。
そういった視点が加わると、ビジネスの世界のリアルがより鮮明に見えてきます。
成功の裏には無数の失敗、そしてそれを糧に成長する企業文化が存在します。
それを知るだけで、より豊かなビジネス観を得られるはずです。
いま目立っている企業だけでなく、その陰で奮闘する社員や消えていった企業にも注目してみると、あなたのビジネスセンスは一段と深まるはずです。
思い切って“墓参り”にも出かけてみてくださいね。